米国のトランプ大統領が導入した関税が市場へ与えた影響を振り返る。トランプ大統領に翻弄される市場の中で勝機を見いだしたい。
- トランプ関税を巡る動き
- 2025年4月2日:相互関税を導入する大統領令に署名
- 2025年4月3日:関税の導入は手術
- 2025年4月5日:相互関税第一弾発動
- 2025年4月6日:関税は薬
- 2025年4月9日:相互関税第二弾発動,そして 90 日間停止
- 2025年4月10日:対中追加関税 145 %
- 2025年4月29日:米国内で自動車を生産するメーカを対象に関税の負担軽減措置
- 2025年5月3日:自動車部品を対象にした 25 % の追加関税が発動
- 2025年7月7日:日本からの輸入品に 25 %の関税を課す相互関税の導入を発表
- 2025年7月22日:日米の関税交渉合意
- 2025年7月31日:大統領令に署名
- 2025年9月16日 : 乗用車の関税率引き下げ
- 2025年10月28日 : 日米首脳会談
- 2026年2月20日 : 米最高裁,トランプ関税「違法」判決
- 各国の対応
- 日本国内産業への影響
- 米国の貿易赤字
- 米連邦最高裁判所の判断
- FIRE を目指す投資家が学ぶべきこと
- (参考)関税の役割
- 更新履歴
トランプ関税を巡る動き
2025年4月2日:相互関税を導入する大統領令に署名
米国のトランプ大統領は,2025年4月2日,「相互関税1」を導入するための大統領令に署名した。
全ての国・地域に対して一律 10 % の関税を設定し,相手国・地域が独自に採用する規制などの非課税障壁に応じて税率を上乗せする。
日本には 24 % の関税が新たに課されることになる。
この日,トランプ大統領は「アメリカ解放の日」だと宣言した。
今日という日はアメリカが再び豊かになり始めた日として永遠に記憶される。
また,2025年4月3日 00:01(日本時間 13:01)には,全ての国・地域から輸入される自動車に対する 25 % の追加関税も発動した。
相互関税で主な国・地域に米国が課す関税率
相互関税で主な国・地域に米国が課す関税率を示す。
| 国・地域 | 米国が課す関税率 | 非関税障壁も考慮し,米国が課せられていると主張する関税率 |
|---|---|---|
| 日本 | 24 % | 46 % |
| 中国 | 34 % | 67 % |
| EU | 20 % | 39 % |
| ベトナム | 46 % | 90 % |
| 台湾 | 32 % | 64 % |
| インド | 27 % | 52 % |
| 韓国 | 26 % | 50 % |
| 英国 | 10 % | 10 % |
| ブラジル | 10 % | 10 % |
| カンボジア | 49 % | 97 % |
| マダガスカル | 47 % | 93 % |
| ラオス | 48 % | 95 % |
| レソト | 50 % | 99 % |
トランプ米政権が発表した相互関税の税率のもとになる数字について,米国が相手国に対して抱える貿易赤字額をその国からの輸入額で割ったとする見方が出ている(どうやらサービスを含まない財の貿易赤字額を輸入額で割った単純な計算式に基づいているらしい)。
貿易赤字額 / 輸入額
例えば,米国の 2024 年の対日貿易赤字額 685 億ドルを輸入額の 1482 億ドルで割って 100 を掛けると 46.2 % であり,米政権が日本から課せられていると主張する 46 % 程度になる。
諸外国はもとよりアメリカの財界も,この新政策の論拠となるお粗末な計算には愕然とした。
2025年4月3日:関税の導入は手術
2025年4月3日,市場の反応について「予想されたことだ」とトランプ大統領は話した。関税の導入を手術に例えて,今後,アメリカが好景気になると強調している。
2025年4月5日:相互関税第一弾発動
ほぼ全ての国・地域に対して一律 10 % の相互関税を課す。
2025年4月6日:関税は薬
2025年4月6日,トランプ大統領は一連の関税を「薬」に例え,株価の下落は必要なプロセスだとの認識を示した。
(株価を)下げたいわけではないが,何かを治すには「薬」が必要な時もある。
米国は外国からあまりにもひどく扱われてきた。愚かな政権がそれを許してきたからだ。
2025年4月9日:相互関税第二弾発動,そして 90 日間停止
2025年4月9日,相互関税のうち第二弾として発動した約 60 か国・地域への関税率の上乗せ措置を 90 日間停止すると発表した。
相互関税第二弾は,2025年4月9日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発動したばかりだったが,わずか 13 時間余りで軌道修正となった。長期金利の上昇や株価下落など金融市場の動揺を米政府が意識した可能性がある。
米国に対して報復措置を打ち出した中国は停止の対象外で,相互関税も含めた追加関税は計 125 % となった。
2025年4月10日:対中追加関税 145 %
米国は中国に対する追加関税が計 145 % になることを発表。
2025年4月29日:米国内で自動車を生産するメーカを対象に関税の負担軽減措置
2025年4月29日,トランプ政権は,米国内で自動車を生産するメーカを対象にして,関税の負担を軽減する措置を発表。
2025年5月3日:自動車部品を対象にした 25 % の追加関税が発動
日本時間の2025年5月3日午後1時,輸入する自動車部品を対象にした 25 % の追加関税が発動した。
追加関税の対象は,米国に輸入されるエンジンやトランスミッションなどの主要な自動車部品が対象となっている。
アメリカに自動車の生産を呼び込み,雇用を増やすことを目的としている。
2025年7月7日:日本からの輸入品に 25 %の関税を課す相互関税の導入を発表
2025年7月7日,トランプ米大統領は日本からの輸入品に 25 % の関税を 8月1日から課す相互関税の導入を発表。
株式市場の反応は,4月の混乱時と比べ落ち着いていた。
- ニューヨーク株式市場(7月7日):一次,ダウ平均株価で 600 ドル超下落したものの,終値は前営業日比 422 ドル安にとどまった
- 東京市場(7月8日):日経平均株価は前日比 101 円高と,むしろ上昇
トランプ米大統領はこれまでも,高関税導入を表明しながら,株価や米国債の価格が下落すると方針を撤回するなど,二転三転を繰り返してきた。
市場関係者の間では,こうした態度を皮肉った「Trump Always Chickens Out(トランプはいつも怖気づく)」の頭文字を取った TACO という言葉も広がっている。
今回も,市場では8月1日に高関税は発動されず,交渉期限が延長されるのではないか,という見方が支配的だ。
2025年7月22日:日米の関税交渉合意
トランプ米大統領は2025年7月22日,日本との関税交渉で合意したと自身の SNS で発表。
日本に対する「相互関税」の税率は,8月1日から適用するとしていた 25 % から 15 % へ下がる。輸入自動車への追加関税を 25 % から 12.5 % に半減させることでも合意し,乗用車の関税率は基本関税の 2.5 % と合わせて計 15 % となる。
トランプ米大統領が合意を表明したのは,英国,ベトナム,インドネシア,フィリピンに続き 5 か国目。
2025年7月31日:大統領令に署名
トランプ米大統領は7月31日,ほぼ全ての国・地域からの輸入品に課す「相互関税」の新たな税率を示した大統領令に署名した。8月7日に発動する。
世界で関税率が一斉に引き上げられ,世界的な物価上昇や景気減速を招く懸念が強まっている。
自動車関税については,米大統領令に明記されておらず,実施時期も不明。
| 主な国・地域 | 4月公表時点 | 新たな税率 |
|---|---|---|
| 英国 | 10 % | 10 % |
| 日本 | 24 % | 15 % |
| 韓国 | 25 % | 15 % |
| EU | 20 % | 15 % |
| インドネシア | 32 % | 19 % |
| フィリピン | 17 % | 19 % |
| タイ | 36 % | 19 % |
| マレーシア | 24 % | 19 % |
| 台湾 | 32 % | 20 % |
| ベトナム | 46 % | 20 % |
| インド | 26 % | 25 % |
| シリア | 41 % | 41 % |
日本に適用される 15 % の税率は,米国にとって最友好国で貿易黒字の相手国でもある英国の 10 % を除けば,最も低い水準である。ただ約 70 か国・地域のうち,15 % は 40 か国・地域に上った。
赤沢経済再生相が 8 回も訪米して公称した経緯や,5,500 億ドル(約 83 兆円)の対米投資を約束した合意内容を踏まえると,「割高」にも映る状況だ。
2025年9月16日 : 乗用車の関税率引き下げ
米国のトランプ政権は,2025年9月16日午前0時1分(日本時間午後1時1分),日本から輸入する乗用車の関税率を従来の 27.5 % から 15 % に引き下げた。「相互関税」の負担を軽減する特例土地も同日から適用する。
2025年10月28日 : 日米首脳会談
日米首脳会談が行われ,対米投資を巡る共同文書を公表。
2026年2月20日 : 米最高裁,トランプ関税「違法」判決
米国の連邦最高裁判所は2026年2月20日,トランプ米政権による国際緊急経済権限法 (IEEPA) に基づいた「相互関税」などの措置を違法とする判決を出した。IEEPA は大統領に対し,関税を課す権限を与えていないと判断した。
判決後,トランプ大統領は,代替手段として各国・地域からの輸入品に一律 10 % の関税を2026年2月24日から課すと発表。さらなる関税措置の導入に向け,通商法 301 条に基づく調査を行うことも表明した。
各国の対応
日本
2025年4月3日,石破首相のコメント
石破首相は米国の関税措置について「極めて残念で不本意だ」と述べ,見直しを求めていく考えを強調した。
2025年4月4日,与野党各党党首の会談
トランプ米大統領による関税政策をめぐり,与野党党首が国会内で会談した。石破首相は会議の冒頭,「政府をあげてこの問題に対応するため,関係閣僚による会議体を設置する」と述べた。また,「言うなれば国難。政府与党のみならず,野党の皆さま方も含めて超党派で検討,対応していく必要がある」との考えを示した。
米国の関税措置を巡る各党の主張のポイントは以下のとおり。
| 党 | 主張 |
|---|---|
| 自民党 | 首相や担当閣僚の訪米時には,国会日程などで配慮してもらいたい |
| 公明党 | 徹底した事業者支援を実行してほしい |
| 立憲民主党 | 電話を含め,首相がトランプ大統領と直談判することが一番大切だ |
| 日本維新の会 | できるだけ早く首脳会談をするべきだ |
| 国民民主党 | 経済の悪化を見越し,手取りを増やす政策をやってほしい |
| 共産党 | 関税に抗議し,撤回を求めるべきだ |
| れいわ新撰組 | 国内企業が打撃を受けた場合,積極財政で損害をカバーすべきだ |
赤沢氏による交渉
石破首相(当時)は,側近の赤沢氏を交渉役に指名。赤沢氏は関税措置の見直しに向けて 8 回にわたり訪米し,ベッセント財務長官やラトニック商務長官らと協議を重ねた。
2025年12月23日,経済産業大臣となった赤沢氏は会見で「毎年 5 兆円超課されるはずだった関税を 2 兆円超削減し,経済への影響の緩和と予見可能性を高めることができた」と強調した。
中国
中国政府は2025年4月4日,米国からの全ての輸入品に 34 % の追加関税を課すと発表した。関税は4月10日に発動する。米国が中国に 34 % の「相互関税」を課したことへの対抗措置としており,世界の 2 大経済大国の貿易摩擦がさらに激化する。また,世界貿易機関 (WTO) に米国を提訴したことも明らかにした。
中国税関当局は「米国の行動は国際貿易の規則に違反し,一方的ないじめ行為だ」と改めて批判した。
2025年4月9日,中国政府は 10 日に発動する米国への報復関税を 34 % から 84 % に引き上げると発表した。対象は,米国からの全ての輸入品である。米国が 9 日から 84 % の相互関税を課したことへの対抗措置としている。
2025年4月11日,米国の相互関税への報復措置として追加関税を 84 % から 125 % に引き上げると発表した。米国からの全ての輸入品を対象に 12 日から発動する。同日,習近平国家主席は「中国は理不尽な攻撃を恐れない」と発言した。
フランス
フランスの幕論大統領は,トランプ氏が EU への相互関税として 20 % を課すと発表したことを受け,「残酷で根拠のないものだ」と批判した。
カナダ
カナダのカーニー首相は,アメリカとの統合を着実に深めてきた深い関係は終わった。これは悲劇だが,新たな現実でもある」と強調した。
アメリカが輸入する自動車へ 25 % の追加関税を発動したことを受け,カーニー首相は報復関税を課すと表明している。
日本国内産業への影響
米トランプ政権による自動車への追加関税と「相互関税」の導入により,国内産業は深刻な打撃を受ける恐れがある。
財務相の貿易統計(2024年)に基づく日本の対米輸出額の上位品目を示す。
| 順位 | 品目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自動車 | 6兆264億円 | 28.3 % |
| 2 | 自動車部品 | 1兆2310億円 | 5.8 % |
| 3 | 原動機 | 1兆898億円 | 5.1 % |
| 4 | 建設用・鉱山用機械 | 8954億円 | 4.2 % |
| 5 | 科学光学機器 | 5896億円 | 2.8 % |
| 6 | 半導体等製造装置 | 5298億円 | 2.5 % |
| 7 | 重電機器 | 4943億円 | 2.0 % |
| 8 | 電気計測機器 | 4195億円 | 2.0 % |
| 9 | 医薬品 | 4115億円 | 1.9 % |
| 10 | ポンプ・遠心分離機 | 4025億円 | 1.9 % |
自動車産業への影響
日本の対米輸出額の上位品目の自動車・自動車部品である。
日本商工会議所の小林健会頭は2025年4月3日に発表したコメントで,自動車に 25 % の追加関税が発動されたことに対し,強い懸念を示した。
自動車産業は,裾野の広いサプライチェーン(供給網)によって支えられている。受注減少や投資・雇用縮小を通じ,日本経済全体への甚大な影響が懸念される
自動車メーカへの影響
日本,メキシコ,カナダから多くの自動車を輸出する自動車メーカにとっては大きな打撃となりそうだ。追加関税への影響がより大きいとみられるのが,マツダと SUBARU だ。マツダは米国で販売する自動車の 8 割がメキシコと日本での生産,SUBARU は半分以上を米国で生産するが,米国市場への依存度が世界販売台数の 7 割以上と高い。(参考)「自動車 | 世界・日本のデータを chart.js で見える化」
自動車メーカの株価は上昇(2025年7月22日)
日米関税交渉が 15 % で決着したとたん,国内自動車メーカの株価は大きく上昇した。
- トヨタ : 前日比 16 % 高
- マツダ : ストップ高の買い気配
- ホンダ : 前日比 12 % 高
- 日産 : 前日比 10 % 高
- SUBARU : 前日比 19 % 高
米国の貿易赤字
米国の貿易赤字は 2024 年に過去最悪の 1.2 兆ドル(約 175 兆円)に達した。この 30 年間で貿易赤字は 10 倍に膨れた。
米国が貿易赤字を抱える上位国・地域を示す(2024年,通関ベース)。
| 国名 | 赤字額(億ドル) |
|---|---|
| 中国 | 2,952 |
| メキシコ | 1,815 |
| ベトナム | 1,235 |
| アイルランド | 868 |
| ドイツ | 852 |
| 台湾 | 737 |
| カナダ | 706 |
| 日本 | 687 |
| 韓国 | 662 |
| インド | 456 |
| EU | 2,367 |
米連邦最高裁判所の判断
米連邦最高裁判所では,国際緊急経済権限法 (IEEPA) を根拠に議会の承認なく広範な関税を一方的に課した関税措置が合法かどうかが審理されている。1 審と 2 審では違法との判断が下り,11 月の口頭弁論では共和党寄りの保守派判事からも大統領に懐疑的な見解が示された。
違法判断が出された場合の確実な関税返還を求める訴訟も相次ぎ,日本企業では豊田通商,住友化学,リコーなどの北米法人が原告となっている。
トランプ氏は11月,最高裁が違法と判断した場合は「我が国に壊滅的な打撃となるが,第 2 の戦略を練らなければならない」と述べた。
米最高裁,相互関税は「違法」判決
米国の連邦最高裁判所は2026年2月20日,トランプ米政権による国際緊急経済権限法 (IEEPA) に基づいた「相互関税」などの措置を違法とする判決を出した。
- IEEPA に基づく相互関税などは違法
- IEEPA は大統領に関税を課す権限を与えていない
- 徴収済みの関税返還については判断示さず
FIRE を目指す投資家が学ぶべきこと
トランプ関税の一連の動きは、政策リスクが市場に与える影響の大きさを改めて示した。
FIRE を目指す投資家にとって重要なのは以下の点である。
- 政策変更は予測不能であるため,分散投資が必須である
- 短期的な市場の混乱に振り回されず,長期視点を維持すること
- 地政学リスクは資産クラスごとに影響が異なるため,資産配分の見直しが重要である
- 為替・金利・コモディティなど,株式以外の指標も常に観察すること
市場は常に不確実性を抱えるが,冷静な分析と長期的な視点が FIRE 達成への近道である。
(参考)関税の役割
関税は,海外からの輸入品に課せられる税である。対象となる商品は,食料品,金属,自動車など様々だ。通常,輸入者が輸入国の政府に関税を治める。輸入者が支払った関税は,最終的に消費者が支払う価格に上乗せされる。
関税には 3 つの役割がある。
- 関税収入を国の財源とする役割
- 国内産業を保護する役割
- 他国との貿易で損害が生じた場合の対抗措置として関税を使う制裁の役割
これらの役割とは裏腹にデメリットもある。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 国の税収が増える | 自由貿易体制が崩れる懸念 |
| 国内産業が守られる | 消費者や企業の負担が増える |
| 商品の不当な安売りなどをする国への制裁 | 産業競争力の低下 |
更新履歴
- 2025年4月5日 新規作成
- 2025年4月12日 米国の貿易赤字を追加
- 2025年5月3日 自動車部品への関税を追加
- 2025年7月13日 トランプ米大統領が7月7日,日本からの輸入品に 25 % の関税を課す方針を表明した旨を追加
- 2025年7月26日 日米の関税交渉合意を反映
- 2025年8月2日 米大統領令への署名(7月31日)を反映
- 2025年9月21日 乗用車の関税率引き下げを反映
- 2025年12月30日 米連邦最高裁判所の判断を追加
- 2026年2月22日 米最高裁,トランプ関税「違法」判決を追加
- 相互関税は国際緊急経済権限法 (IEEPA) に基づく措置。 ↩︎


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