カナダのコンビニエンス大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT 社)からの買収提案を受け,揺れ動くセブン&アイ・ホールディングス(以下,セブン&アイ HD)の企業動向を整理する。
セブン&アイ HD の主な動き
セブン&アイ HD は 2005 年の持株会社化以降,国内外で積極的な M&A を進めてきた。近年は祖業の総合スーパー事業からの撤退を進め,コンビニ事業への集中を鮮明にしている。
| 年月日 | 主な動き |
|---|---|
| 2005年9月1日 | 持ち株会社(株)セブン&アイ・ホールディングス設立,上場 |
| 2005年11月 | (株)セブン-イレブン・ジャパン,米国 7-Eleven, Inc. を完全子会社化 |
| 2006年6月 | (株)ミレニアムリテイリング(現(株)そごう・西武)を完全子会社化 |
| 2006年11月 | (株)ヨークベニマルを完全子会社化 |
| 2016年5月 | 井坂隆一氏(1957年10月4日生)が社長就任 |
| 2021年5月 | 7-Eleven, Inc. が米国 Marathon Petroleum Corporation の主に「Speedway」ブランドで運営されるコンビニエンス事業と燃料小売事業を取得 |
| 2023年9月 | (株)そごう・西武を米投資ファンドに売却 |
| 2024年8月 | セブン&アイ HD は,クシュタールから買収提案を受けたと発表 |
| 2024年10月 | 祖業のイトーヨーカ堂などを事実上切り離し,日米コンビニ事業に集中する自力での企業価値向上策を公表 |
| 2024年11月 | セブン創業家による総額 8 ~ 9 兆円規模の MBO 案を発表 |
| 2025年2月27日 | 創業家から「資金調達のめど立たず」と MBO 断念の通知を受け取ったと発表 |
| 2025年3月6日 | 井坂隆一氏が社長を退任し,スティーブン・ヘイズ・デイカス氏(1960年11月7日生)が後任となる人事を発表。合わせて,新たな企業価値向上策も説明。 |
| 2025年5月1日 | アリマンタシォン・クシュタール社と秘密保持契約を締結 |
| 2025年5月27日 | 定時株主総会を開催 |
| 2025年6月19日 | 傘下のセブン銀行を非連結化すると発表。経営資源をコンビニ事業に集中させるため,セブン&アイグループの保有比率を 40 % 未満に引き下げる。 |
| 2025年7月17日 | アリマンタシォン・クシュタール社が協議を終了,買収提案を撤回する決定を下したことを発表 |
決算動向
連結営業成績
セブン&アイ・ホールディングスの連結営業成績を示す。
連結財政状況
セブン&アイ・ホールディングスの連結財政状況を示す。
連結・キャッシュフローの状況
セブン&アイ・ホールディングスの連結キャッシュ・フローの状況を示す。
2025年2月期
2025年4月9日,セブン&アイ・ホールディングスは2025年2月期の連結決算を発表した。主力のコンビニ事業が物価高で苦戦し,最終利益は前期比 23 % 減の 1730 億円で 2 期連続の減益となった。
クシュタールから買収提案を受ける中,単独経営路線を掲げるセブンは業績の建て直しが急務となっている。
スティーブン・ヘイズ・デイカス取締役(2025年5月に社長就任予定)は決算記者会見で「保守的な姿勢があり,(変革の)スピードを鈍化させてしまったかもしれない」と経営環境の変化に対応が遅れたことを認めた。
2025年8月期
2025年10月9日,セブン&アイ・ホールディングスは2025年8月中間連結決算を発表した。
グループ全体の営業利益は 11.4 % 増の 2,083 億円,純利益は約 2.3 倍の 1,218 億円だった。
- 前年にネットスーパーからの撤退で損失を計上した反動
- イトーヨーカ堂などスーパー事業が復調
- 海外コンビニの利益率改善
一方,国内コンビニ事業の営業利益は前年同期比 4.6 % 減の 1,217 億円と低迷している。物価高に伴い,原材料や販売管理の費用が増えている。
記者会見したスティーブン・ヘイズ・デイカス社長は「セブン-イレブンへの来店頻度が低下している。早期に客数回復を目指したい」と話した。
2026年2月期 第3四半期 決算概況
2026年2月期 第3四半期は事業構造改革による損益改善により純利益は大幅増益。
当期純利益を上方修正し,2700 億円とした。また,1 株当たり当期純利益は 109.57 円を見込む。
| 金額 | 前年比 | 修正額 | |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 10兆5,600 億円 | 88.2 % | ー |
| 営業利益 | 4,040 億円 | 96.0 % | ー |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,700 億円 | 156.0 % | +50 億円 |
| 1 株当たり当期純利益 | 109.57 円 | 164.5 % | +1.91 円 |
クシュタールの買収提案
カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールの買収提案があった。
2025年3月13日,クシュタールのアラン・ブシャール会長は「統合が実現すれば真のグローバルなコンビニのチャンピオンになれる」と買収への強い意欲を示した。
セブン vs クシュタール(比較)
| セブン&アイ | クシュタール | |
|---|---|---|
| 米国におけるコンビニ店舗数 | 約 13,000 | 約 6,000 |
| 買収提案 | 株主価値につながる確実性がなければ取引できない。協議は継続する。 | 提案を撤回しない。敵対的 TOB は検討していない。 |
| 米国の独禁法 | 米当局の審査に時間がかかり,この間に競争力が失われる。 | 審査には 2 年もかからない。当局の承認への明確な道筋がある。 |
| 企業価値向上 | 2 兆円規模の自社株買いや米子会社の株式上場などを進める | セブン-イレブンの食品の評価は高い。投資を行い,世界で展開したい。 |
| 店舗に対する考え | 店舗網はインフラとして非常に重要。加盟店との強力な体制を作る。 | 店舗の閉鎖や従業員の解雇の計画はない。 |
買収の実現には,米連邦取引委員会 (FTC) から 2,000 店規模の近接する店舗の売却を求められる可能性がある。
クシュタールの動き
セブン&アイ HD の買収に向けて,クシュタールの動きは活発化している。
| 年月日 | クシュタールの動き |
|---|---|
| 2025年2月28日 | 日本国内で法人を設立 |
| 2025年3月11日 | セブンが買収協議に十分に応じていないとの声明を発表 |
| 2025年3月13日 | 記者会見を行い,協議が長期化しても提案自体を撤回はないと主張 |
| 2025年7月17日 | 協議を終了し,買収提案を撤回する決定を下す |
買収提案への対抗策
クシュタールの買収提案に対し,セブン社内では忌避感が強い。対抗策として,セブン創業家が提案した経営陣による自社株買収 (MBO),企業価値向上が考えられる。
MBO
MBO 案を巡っては,社内外から「大義はなく,創業家を守るためという印象」との声もあるという。創業家出身のセブン&アイ HD の伊藤順朗副社長への不信感もくすぶっている。
2025年3月3日,伊藤忠商事の岡藤正広会長最高経営責任者 (CEO) は,セブン&アイ HD の創業者が主導した経営陣による自社株買収 (MBO) による非上場化について,「日本のコンビニ業界を守るという大義だったが,スキーム(計画)に無理があった」と語った。MBO に対し,伊藤忠は 1 兆円規模の出資を検討していたが,資金確保のめどが立たなかった。
企業価値向上
セブン&アイ HD は,総合スーパーを展開するイトーヨーカ堂などの切り離しが遅れ,株価は低迷していた。
セブン&アイ HD の経営陣が企業価値向上を進め,自力で株価を高めなければ,「新たな買収リスクや,投資ファンドによる経営への注文を招きかねない」(アナリスト)との指摘は多い。
2024年度 決算説明資料(2025年4月9日)において,株式価値向上に向けた 4 つの道筋を示した。
- 顧客第一:商品開発を通じ,よりよい商品とサービスを提供
- 実行力:迅速かつ規律をもった成長投資と株主還元を実現
- コストコントロール:コスト改善を実現し顧客に価値を還元
- グローバルでの取り組みの共有:グローバルで各国の市場における強みを共有
セブン&アイ HD と ACT 社との協議の進捗状況(2025年5月1日)
2025年5月1日,セブン&アイ・ホールディングス(以下,セブン&アイ HD)は,アリマンタシォン・クシュタール社(以下,ACT 社)との協議に関する現在の状況を発表した(2025年5月1日「当社とアリマンタシォン・クシュタール社との協議の進捗状況について」)。
セブン&アイ HD と ACT 社は秘密保持契約(以下,NDA)を締結した。
NDA の具体的な内容は公開されていないが,本 NDA 締結により,店舗売却パッケージにおける買主候補に開示された情報に加え,ACT 社と更なる情報交換が可能になると考えているとのこと。
特別委員会の委員長であるポール与那嶺取締役は,株主の価値を最大化しうる 2 つの選択肢を並行して追求することをコミットした。
- ACT 社との連携を通じた,店舗売却の実現可能性及び案件が合意された場合における取引官僚の蓋然性の追求
- スティーブン・ヘイズ・デイカス次期 CEO の下での,セブン&アイ HD 独自の確固たるマネジメント施策の実現
ACT 社が協議を終了,買収提案を撤回(2025年7月17日)
ACT 社がセブン&アイ HD との協議を一方的に終了し,買収提案を撤回する決定を下したことを確認したと発表(2025年7月17日「アリマンタシォン・クシュタール社のプレスリリースに関する当社の見解について」)。
セブン&アイ HD は,北米のコンビニエンスストア事業を含むグループ事業の価値顕在化による,単独での価値創造の施策を今後も継続して遂行していくとした。
東京株式市場では,セブン&アイ HD 株の終値は前日比 9.2 % 安の 2,007 円となった。ACT 社が買収提案を撤回したため,高値での売却を目的に保有していた投資家の売りが相次いだものとみられる。
私のセブン&アイ HD株保有履歴
私のセブン&アイ・ホールディングス株式の保有履歴を示す。
| 約定日 | 取引売買 | 数量 [株] | 単価 [円] |
|---|---|---|---|
| 2024-08-05 | 買付 | 100 | 1,700.0 |
| 2024-09-03 | 売付 | 100 | 2,170.0 |
| 2025-03-04 | 買付 | 100 | 1,980.0 |
株主優待も受けており、長期保有の魅力を感じている。
更新履歴
- 2025年3月10日 新規作成
- 2025年4月12日 決算(2025年2月期)を追加
- 2025年4月13日 決算の連結営業成績,連結財政状況,連結キャッシュ・フローの状況を追加
- 2025年5月1日 「セブン&アイ HD と ACT 社との協議の進捗状況」を追加
- 2025年5月20日 セブン&アイ・ホールディングスの株主優待を追加
- 2025年6月21日 セブン&アイ,セブン銀行を非連結化を追加
- 2025年7月17日 アリマンタシォン・クシュタール社との協議終了
- 2025年10月13日 2025年8月中間連結決算を追加
- 2026年2月19日 2026年2月期 第3四半期 決算概況を追加


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